最高裁判所第三小法廷 昭和42年(行ツ)25号 判決 1971年11月16日
上告人 前田幸盛
被上告人 山鹿税務署長
訴訟代理人 山田二郎
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について。
論旨は違憲をもいうが、その実質は、利息制限法による制限超過の利息・損害金についても、約定の履行期が到来した以上、これが課税の対象となるものとしてなされた本件各更正処分および加算税賦課処分は、制限超過の利息・損害金分に関するかぎり無効であり、これを有効とした原判決には、所得税法の解釈を誤つた違法がある旨を主張するものと認められる。
按ずるに、利息制限法による制限超過の利息・損害金については、たとえ約定の履行期が到来しても、なお未収であるかぎり、昭和四〇年法律第三三号による改正前の所得税法一〇条一項にいう「収入すべき金額」に該当せず、これが被課税所得を構成しないと解すべきことは、当裁判所の判例とするところであり(当庁昭和四三年(行ツ)第二五号昭和四六年一一月九日第三小法廷判決参照)、本件各更正処分および加算税賦課処分は、この点において違法たるを免れないが、かかる違法はいまだ当該処分をただちに無効ならしめるものとはいえないから、その無効確認を求める上告人の本訴請求を排斥した原判決は、けつきよく、正当たるに帰し、論旨は、採用するに由ないものというほかはない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判官 田中二郎 下村三郎 松本正雄 関根小郷)